死別後、誰かに会いたいのに罪悪感がある|亡き夫への思いと誘いへの返事

以下は、夫と死別した64歳の美保さんを想定して、編集上作成した仮の相談例です。

美保さんは、夫を亡くしたあとに通い始めた読書会で、一人の男性と話すようになりました。同じ小説を読んでも感想が違い、その続きを聞くのが楽しみになっています。先日の会が終わり、本を鞄にしまっていると、次は会のあとに二人で話さないかと誘われました。

「また話したいんです。でも、夫以外の人に会うのを楽しみにしていると、夫を置いていく気がして。恋愛がしたいのかと聞かれると、そこまでは分かりません」

誘いの返事をするために、夫への思いも、これからの恋愛も、一度に決めようとすると言葉が出てきません。まずは「今回、どんな時間を過ごしたいか」から考える方法があります。会う返事だけでなく、まだ決めない返事も含めて見ていきます。

夫への思いのうち、変えたくないことを書く

美保さんがためらっているのは、新しい人と会えば、夫との暮らしを「もう終わったこと」にしなければならないように感じるからです。けれど、その人と何をしたいのかを考えると、今浮かぶのは、読書会で話しきれなかったことの続きでした。

夫への思いと、新しい相手に望むことを、一つの答えにまとめずに書いてみます。たとえば、美保さんの自分用メモなら、次のようになります。

自分用メモの例。相手に送る文章ではありません。

夫との日々は、今も大切にしたい。思い出す自分まで変えたくない。

あの人が話していた本のことを、もう少し聞いてみたい。

二人で会う返事が、そのまま「恋人になりたい」という返事にはなってほしくない。

本を横に置き、自分用のメモを書く手元

このメモなら、夫への思いを消す話ではなく、相手にどんな会い方を伝えたいかへ進めます。ただ、「夫に悪い気がする」としか書けないときは、そこで止める選択もあります。ためらいを説明できることを、会うための資格にするわけではありません。

書き出す作業そのものがつらい日は、メモを作らず、誘いへの返事だけを考えてもよいでしょう。死別からの年数を、この返事の基準にはしません。

「会いたい」は、どんな時間への希望なのか

美保さんが好きだった小説の主人公について、その男性は、少し身勝手ではないかという感想を持っていました。なぜそう思ったのか聞きたいし、自分が好きだった場面も話したい。彼女には、二人で話したい具体的な内容があります。

読書会で、本について相手の話を聞く女性

本の話を楽しめる友人がほしいのなら、友人として会いたいと伝える選び方があります。「恋愛ではないと失礼かもしれない」と、望んでいない交際まで引き受けることは避けたいところです。

一方で、本の話だけでなく、その人自身のことをもっと知りたい、恋愛をしてみたいと思っているなら、その希望も書き残せます。「また恋愛をしたい。夫を忘れたいわけではない」という自分用の言葉も考えられます。友人として話す楽しさと、恋愛への関心が両方あっても、一つに絞る作業は不要です。

いずれ再婚したいという希望がある場合も、今回誘ってくれた相手と再婚を決める話とは別です。逆に、友人はほしいけれど再婚は望まない人も、そのままの希望を伝えることになります。

美保さんには、まだ「恋愛をしたい」と言えるほどの答えはありません。今のところ伝えられるのは、本の話をもう少ししてみたい、ということです。

本を膝に置き、窓の外へ目を向ける女性

一回会う・保留する・見送るを、今回の返事として選ぶ

返事を選ぶときは、「迷いがなくなったか」よりも、今の自分が望む会い方を考えます。美保さんなら、読書会のあとに短く話すこと。別の人なら、二人ではなく、ほかの仲間もいる場で会うことかもしれません。

会い方を考えたいなら、一回の交流を提案する。まだ返事が決まらないなら保留を伝える。今回は会いたくないなら断る、という選び方です。具体的な誘いがない人は、今は何も決めずにおくことも含めて考えてみてください。

以下は、誘ってくれた相手に伝えるために作成した文例です。自分の希望に合うものを選び、望んでいない約束は加えません。

短く話してみたいとき

口頭での最初の一言は、会いたい内容から伝えます。

「次の読書会のあと、少し本の話をしませんか」

恋愛への返事だと思われることが気になる場合は、必要な補足を続けます。

「お付き合いについては、まだ分からなくて。今回は、本の話ができたらと思っています」

友人として会いたいと決まっている人なら、補足は「お付き合いは考えていませんが、友人として本の話ができたらうれしいです」となります。反対に、恋愛への関心があるなら「あなたのことを、もう少し知りたいです」という言葉もあります。相手に合わせて、気持ちを小さく見せる必要はありません。

誘いへの返事として、一回の交流を提案、保留、見送りを選ぶ。誘いがなければ今は決めず、夫への思いはそのままにできる。
今回の誘いへの返事

返事をもう少し保留したいとき

返答の時期を相談したい場合の、送るメッセージです。

「お誘いありがとうございます。まだ返事を決められずにいます。金曜日まで考えてから、お返事してもよいですか」

ここでの金曜日は文例上の日付です。返答日を相談するのは、夫への気持ちをその日までに整理するためではありません。会うかどうかの返事をする日であり、そのときに断る答えも残ります。

いつ返せるかも決められないなら、「今は返事ができないので、今回は予定を決めずにおきたいです」と伝える方法があります。この言葉は、特定の日を空けて待ってもらう依頼とは区別します。

今回は会わないとき

送るメッセージは、今回の誘いをどうするかが分かる短さにします。

「お誘いありがとうございます。今回は、二人でお会いするのは控えます」

別の日を提案したい気持ちがなければ、「また今度」は足しません。断る理由を詳しく話したくないなら、この一文で止めます。

こちらの希望を伝えたあと、相手の返事を確かめる

「本の話だけなら会いたい」と伝えても、相手も同じ気持ちかは、返事を聞くまで分かりません。相手が交際を前提に会いたいと考えているなら、友人として会う提案を断ることもあります。

一回会う予定は、二人がその会い方を確かめてから決めます。 たとえば「会のあとに三十分ほど、本の話をする」という提案に双方が同意したら、待ち合わせの場所も確かめる。その合意を、交際や再婚の約束へ広げないようにします。

返事が「そのうち」「そうですね」だけなら、日時まで決まったことにはしません。必要なら「次の会のあとにお話しする、ということでよいですか」と確認します。はっきりしないままなら保留にし、予定を空けておけない場合は今回は見送る、と伝えます。

会う方法、日時、場所を二人で確認する。交際や再婚の返事は別に考える。
会う予定の確認
返事が曖昧・未着なら予定は未定。確認、別案の相談、見送りを選べる。
返事が曖昧なときの選択

希望が違った場合は、二人とも望む別の会い方があるかを相談するか、今回は会わないかを選びます。相手の了承を得るために「もう夫のことは考えません」と約束するのではなく、自分が望める会い方かどうかを見直します。

保留をお願いしたときも、相手が待てるとは限りません。返事を急ぐよう求められ、それでも自分は決められないなら、「今はお返事できないので、今回のお誘いは見送らせてください」と伝える文例があります。

会う約束のあとで、気持ちが変わったら

会うと返事をしたあとでも、当日のことを考えると今は会いたくない、という気持ちになったら、決まっている予定の変更を伝えます。約束どおり出かけて平気に振る舞うことを、夫への思いが整理できた証明にはしません。

決まった予定の変更を連絡し、延期は再確認、取りやめは次の日を未定にできる。
決まった予定の変更

別の日なら会いたいのか、新しい日を決めることも今は負担なのかで、送る言葉が変わります。以下は、すでに会う日を決めている相手への連絡文例です。

別の日を相談したい場合:

「約束していた火曜日は、今の気持ちではお会いできません。急な変更でごめんなさい。再来週に変更できるか、相談させてもらえますか」

今回の予定を取りやめ、新しい日も決めない場合:

「約束していた火曜日は、会うのをやめさせてください。今は、次に会う日も決められずにいます。予定を変えることになり、ごめんなさい」

スマートフォンで、予定変更を伝える言葉を確かめる女性

延期を提案しても、相手が了承するまでは新しい予定は未定です。相手が延期を望まない場合には、そのまま今回の予定を取りやめる選択もあります。連絡を続けたいかどうかまで一度に約束せず、まず、決まっていた日に会わないことが伝わる文章にします。

連絡の量も減らしたいなど、休みたいことが会う予定以外にもある場合は、気持ちが揺れるとき、相手へ約束できることを考える記事で整理できます。

美保さんのメモには、夫への思いも、その男性と話したい内容も残っています。返事を送る前に見直すのは、そのどちらかを消せたかではなく、これから送る言葉が今の自分の希望に合っているか、という点です。