70代、一人暮らしは続けたい。誰かと過ごす時間をどう選ぶ?

一人暮らしは気に入っている。それでも、誰かと親しくなりたい気持ちはある。ただ、食事の時刻も、休日の過ごし方も、相手に合わせる生活は思い描けない——。

70代で長く未婚の暮らしを続けてきた人が、そんなふうに迷ったときは、「一緒に暮らせるか」より手前にある、誰かと過ごしたい時間から考えてみませんか。会うこと、交際すること、家に招くことは、それぞれに希望を確かめられます。

一緒に聴いた曲の話を、もう少し続けたい

ここからは、長く未婚で一人暮らしをしてきた72歳の達夫さんを想定した、仮の相談例で考えます。

達夫さんは、食器の置き場所も、洗濯する日も、自分が使いやすいように整えてきました。夕方には台所に立ち、六時ごろに夕食をとる。食後は、読みかけの本を開く。この流れを気に入っています。

月に一度、午前中のレコード鑑賞会にも参加しています。先月は、同じ曲の二つの演奏を聴き比べました。隣に座った女性とその話になり、達夫さんはピアノの弾き方が気に入ったと話しました。相手が耳をとめたのは、途中のベースだったそうです。もう少し聞きたかったのですが、会場の片づけが始まり、その場では話が終わりました。

片づけが始まった鑑賞会でレコードの話をする参加者
セカンドデイズ相談
読者役

あの曲の話は、またしたい。でも、毎週会うのは違うんです。

ハル

会の帰りに、話す時間を足すなら?

読者役

昼ご飯くらいなら。夕方には家にいたいです。

相手が二人で食事をしたいかは、まだ分かりません。まずは、この一度の希望を相手に聞ける形にしていきます。

いつもの夕方を残して、昼食の時間を考える

達夫さんが変えたくないのは、夕方からの過ごし方です。六時の夕食は、誰かの世話や別の約束があるからではなく、自分がそう過ごしたいから。その希望を伝えるために、特別な用事を作る必要はありません。

予定表の空欄と、人と会うために使いたい時間は別です。 午後に予定がないからといって、昼食のあともずっと一緒に過ごしたいとは限りません。

いつもの台所で野菜を洗う男性の手元

達夫さんなら、会場の近くで昼食をとり、午後には帰る案が考えられます。いつもの昼食場所は変えますが、夕方の過ごし方は残せます。ただし、遠くの店へ移動するなら、帰り道も含めて、その日に使いたい時間に収まるか考え直します。

ここで決めるのは、今後ずっと守る「交際の規則」ではありません。今回なら何を変えてもよいか、何は変えたくないかです。昼食は一緒にとりたいけれど、そのあとの買い物は一人で済ませたい。逆に、食事よりも帰り道で少し話すほうが気楽なら、そちらを提案してもよいでしょう。

相手に会うために動かす予定はあっても、これまでの習慣を全部、交渉の対象にする必要はありません。譲れない時間があるなら、予定を決める前に伝えます。相手にも残しておきたい時間があるか、予定を相談するときに聞いてみてください。

時間以外にも、連絡やお金の使い方で大切にしたいことが出てきたら、生活場面から希望を言葉にする方法で広げて考えられます。

外で会うことと、家に招くことは別の希望

「家の中まで変わるかもしれない」という心配が大きいなら、まず、外で会うことについて考えます。達夫さんの案は食事と会話であって、自宅でレコードを聴く約束ではありません。

交際を望むかどうかも、別に確かめることです。二人で昼食をとることに応じたからといって、恋人として付き合う意思まで伝え合ったことにはなりません。相手から交際の希望を聞いたときには、自分も望むのか、まだ決めていないのかを、その言葉に沿って返します。

屋外の歩道で少し距離を空けて話す二人

たとえば、後日「今度は家でレコードを聴きたい」と言われても、自分は家に招きたくない。そういう場合には、次のような返答が考えられます。

家で一緒に聴くことは考えていないんです。外でお話しするほうが、私は落ち着きます。

これは、家への招待を断るときの文例です。「慣れたら」「いつかは」と、本心にない約束を添えなくても伝えられます。まだ迷っているのであれば、「家へ招くことは、まだ決めていません」と、決まっていない範囲をそのまま話します。

交際、家への招待、同居を、一つの承諾として扱わないことが大切です。 家に招いた日があったとしても、毎週の訪問や共同生活まで望んでいるかは別の話です。

ただし、一人暮らしを続けたい意思がはっきりしていて、相手は将来の同居を前提に交際を考えているなら、その違いは後回しにしないほうがよいでしょう。「しばらくしたら気が変わる」と思わせたまま進むのではなく、現在の希望を伝えたうえで、相手がどう考えるかを聞きます。

相手の希望を聞いてから、次の一度を決める

達夫さんから誘うなら、最初は、話の続きを聞きたいことと、その日の昼食を提案します。口頭で伝える文例です。

この前のベースの話、もう少し聞きたいです。次の会のあと、どこかでお昼を食べませんか。

食事に前向きな返事があれば、「私は午後には帰りたいのですが、お時間はどうですか」と続けられます。最初から生活上の条件を全部並べるのではなく、今回の過ごし方に関わることを確かめます。

ここで聞きたいのは、相手の予定が空いているかだけではありません。会のあとも話したいのか、帰宅して休みたいのか、別の日に会うほうがよいのか。自分の案に応じてもらうためではなく、相手がどんな時間を望んでいるかを知るための問いかけです。

誘いへの返事に合わせ、過ごし方を相談する、別の日を自分も望むか考える、今回を見送る、確認・保留を選ぶ四つの場面。曖昧な返事は約束にしません。
別の日も自分が望むかを確かめます。はっきりしない返事は約束にせず、確認・保留や見送りを選べます。

以下は、返答に応じた考え方の例です。達夫さんが実際に受け取った返事ではありません。はっきり断られた場合は、その誘いはそこで終えます。

「会のあと、一緒に食事をしたい」と返ってきたら

互いに昼食を望み、食後に帰ることにも無理がなければ、日時と店を相談します。相手に「その日は早く帰りたい」という事情があれば、短く話して別れる案に変えることもできます。どちらもその過ごし方を望むと確認してから、予定にします。

一度、昼食の約束をすることと、それ以降も毎回付き合うことは別です。会ったあとには、話せてよかったことだけでなく、時間や移動に無理がなかったかも確かめ、次に誘うかを考えます。

自宅の机で空白の手帳と時計を見比べる人の手元

「会のあとは帰りたい。別の日なら」と言われたら

これは、達夫さんの案とは違う希望です。別の日に出かけることを自分も楽しみにできるなら、改めて相談します。会の日に少し話す以上の予定は増やしたくないなら、空いている日を探してまで合わせる必要はありません。

断る場合の文例なら、「別の日に出かけることは、今は考えていません。今回は食事を見送ります」と伝えられます。そこで相手が残念に思う可能性まで、こちらで消すことはできません。集まりの中では話を続けたいと思っていても、相手も同じように関わりたいかは確かめることになります。

相手がもっと頻繁に会いたいと望んでいる場合も、少ない回数に慣れてくれることを前提にしないでください。どちらかが望まない会い方しか残らないなら、二人で会うことを見送る選択もあります。

返事が曖昧なまま、または返事がないなら

「また機会があれば」だけでは、今回の昼食に応じる返事かどうか分かりません。次の会で確かめる機会があれば、「この前のお昼の話、どうしましょう。難しければ今回はなしにしましょうか」と聞けます。

確認の返事がない間は、約束として予定に入れません。返答を待っておくことが負担なら、「まだ決まっていないので、今回は私はそのまま帰ることにします」と、自分の予定を伝えて終えることもできます。曖昧な返事を、承諾にも拒絶にも決めつけない扱いです。

共有したい時間が、まだ浮かばないなら

達夫さんには「曲の話の続きを聞きたい」という具体的な希望がありました。でも、読んでいる今、同じような場面が思い浮かばなくても、無理に探す必要はありません。

誰かと過ごしたいのか、周囲に勧められたので考えているだけなのか、まだ分からない。そんなときは、二人で会う予定を入れずに、今ある集まりでの会話を続けながら考える方法もあります。ただし、その集まりでの交流さえ増やしたくないなら、今の過ごし方のままで構いません。

すでに誘われていて、今は二人で会うつもりがない場合の返答例です。

お誘いありがとうございます。今は、二人で出かけることは考えていません。

一方、会いたいかどうか自体を決められない場合は、「まだ決められないので、今回は約束せずにおきたいです」と伝えることもできます。「考えておきます」と言って相手を待たせ続けるより、今回の予定は入れないと分かる返事です。

達夫さんの相談で残ったのは、次の鑑賞会のあとなら一緒に昼食をとりたい、という本人の希望です。相手には、まだ声をかけていません。二人の予定になるかどうかは、相手の希望を聞いてから。今のところ、夕方六時の食卓を二人分に変える予定はありません。